私たちは、不登校やフリースクールにかかわる二つの全国団体が協力し、札幌定山渓にて「登校拒否・不登校を考える夏の全国大会2012 in 北海道」を開催しました。大津や北本のいじめ自殺報道が続く中、大会中にいじめ・いじめ自殺を考える緊急集会をもちました。
大津のいじめ自殺事件は、いじめの陰惨さと学校や教育委員会の対応のずさんさ、無責任さが次々と明るみに出ることになり、世の注目を集めています。中学生は亡くなる前にどんな気持ちだったことでしょう。あまりにつらい日常が続き、自らの手で自らの生命を絶つ以外に、楽になる道がなかったのだと思います。
二度とこのようなことが起きてはなりません。そのためにはどうしたらいいでしょうか。
第一に、いじめといじめ自殺に対して、実態に即した認識が必要だと思います。七月九日、北本市のいじめ自殺裁判の判決が出ましたが、「原告(遺族父母)の訴えは全て却下」という不当なものでした。判決理由には、一つひとつのいじめは、「いじめと認定できない」また「自殺につながったとはいえない」と述べられています。そしていじめが成立しないのだから、原告がいう学校・市・国を訴える点も却下されました。これはあまりに裁判官が「いじめ」の実態を知らないといえます。一つひとつの行為は、本人が嫌だったり苦痛だったりしたらいじめです。また、いじめが継続的に行われることにより、人格が破壊されるほどダメージを受け、追いつめられることがあるのです。子どもの最善の利益を守る目的で、当事者の立場にたった子どもの把握、調査、判決が全てのいじめ・いじめ自殺に行われる必要があります。
第二に、この世に生を受けて何年も生きていないというのに、子どもが自らの生命を絶つ、ということは、何としても防がねばなりません。その為に私たちは、長い経験から子ども達に「いじめから逃げなさい」と伝える必要があると考えます。日本社会では八六年の鹿川君事件から四半世紀経つというのに、同じことの繰り返しで、いじめ自殺を防ぐことができていません。どんなことがあっても学校は行くべきところとされ、行かないのはよくないとされてきたことが、影響を与えています。不登校はあってはならない、学校復帰せよ、という施策もまた事件の片棒をかついでいるといえるでしょう。いじめがあっても、子どもは学校へ行くしかない、逃げることが許されない、親や社会がその状況をつくってきたことに思いを馳せていただきたいのです。学校は命をかけてまで行くところではありません。
私たちは、とうとう学校へ行けなくなった人、もう行かないと心で思った人、学校ではなくフリースクールや家庭で育ってきたという人たちが、「それでよかった」と本音で言っているのを聞きますし、「あのまま行き続けていたら、今生きていなかっただろう」という話も聞きます。そうしてやっと安心でき、幸せな人生を歩んでいる人もたくさんいます。
子どもにとって、学校教育は義務ではありません。権利です。そして子どもの権利条約が定めているように、休む権利もあります。自分に合った教育を選ぶ権利もあります。学校以外にも多様な場があることを含め、「いじめから逃げていい」「もう行かなくてよい」と知らせるべきでしょう。そして早急に学校教育一本しかない仕組みを変え、学校以外の場でも安心して成長していけるよう制度を整えるべきだと考えます。
第三に、いじめる側の問題に腰をすえて取り組むことが必要です。取り締まりを強化したり、「絶対許さない」といえば解決するというふうには思えません。子ども達は、なぜ人をいじめるのか。その背景にあるもの、国連子どもの権利委員会の勧告にもあったように、高度に競争的な教育の中で、抱え込んでいるストレスや不全感、満たされない心、存在を大切にされないできた経緯を一人ひとり把握する必要があります。子ども達は学校も苦しい、家庭や社会も苦しい状況の中で、歪んだ面白さを見つけている、あるいは発散していると感じます。それらは、SOSでもあり、上から押し付ける教育ではなく、一人ひとりが大切にされていると感じる教育に変わる必要を訴えていると思います。これだけの精神的荒廃をもたらしている国の教育の在り方も、子どものそばにいる大人達も、子どもとの関係の見直しを迫られています。子ども達の命がけのサインに応え、これらの課題に、真剣に、今すぐ取り組むことを訴えます。
子どものみなさんに訴えます。いじめを受けていると感じたら学校を休んで下さい。親や教師はそれを受け止めて下さい。
2012年7月28日
登校拒否・不登校を考える夏の全国大会2012 in 北海道
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